はじめよう位相空間

はじめよう位相空間

はじめよう位相空間

ある日、CV勉強会幹事様のconnpassを見ていたら「数学の入門書をゆっくり楽しむ会」というものを見つけた。どんな本を課題本にしているのかと思ったら、位相空間の本だった。おもしろそうなので本は購入してみた(会には不参加)。メンツがどういう人たちだかわからなかったし、休日はおそとにでたくないですぅ。

著者まえがきによると、「この本は数学専攻の学生だけでなく、工学系や教育系などの人たちにも位相について知ってもらいたい」という考えからなるたけ丁寧に書かれた入門書らしい。もともと数学セミナー誌に連載した原稿を加筆修正したもののようだ。

数学専攻の学生は学部の1・2年生で位相を勉強するらしいが、工学部の情報(某C大の場合)だと残念ながら必修・専門選択のどちらにもそのような授業はない。てなわけで、PRとか画像レジストレーションとかに取り組むことになった学部生は、トポロジーについて独学せねばならない(と僕は思う)。研究室配属後、B4の8〜9月の夏休みボケしているときにボケ防止として読むとよい。某I研の学生は、4~7月の間は基礎数学ゼミに集中したすることを強く薦める。


以下、整理のためにメモを残しておく。


1章は序論としての役割を果たす。ユークリッド幾何学・相似幾何学の話からはじまり、トポロジー位相幾何学)とは何を研究する学問かを手短かに説明。切ったりはったりしない変形を考え、そのような位相的な変形が保存する図形の性質について考える。これがトポロジー。2章ではそれ以降での議論行うためにユークリッド空間とユークリッド空間中の図形の定義を行う。閉球体・球面・アニュラス・トーラスを定義した後、集合と論理の基本的な表現について確認を行う。カントル集合やシェルピンスキーのカーペーットについても述べる。

3章では定義済みの図形を用いて、変形とは数学的にはどのように表すかを述べる。ここで写像が導入され、合成写像・制限写像全射単射全単射逆関数・恒等写像・定値写像を定義する。ホモトピーについては紹介にとどまり、詳細は述べないとのこと。最後に数列と点列、収束について述べる。4章は図形を破らない変形について。ここで、写像の連続性の定義を与える。点列の収束からはじまり、ε近傍の定義、εーδ論法から連続を定義する。そしてリプシッツ写像と射影について述べる。以降の章で写像の連続性を議論する場合、いちいちε-δ論法から連続であるかどうかを証明するのはめんどくさいので、代わりにリプシッツ写像であるかで写像の連続性を証明する。トポロジーにおける切らない変形とは連続な写像である。

5章では写像fの連続性に加えて、張り合わせない変換について述べる。結論からいうと写像fの逆写像が連続であれば、張り合わせない変換である。道具がそろったところで、位相同型・同相写像の定義を行う。位相的性質とは何か、について述べた後、距離について述べる。L1、L2、L∞ノルムを定義。6章は距離空間の話。これまでの議論では距離関数を用いた定義によってε近傍を定義し、連続の話をしてきた。ところが、距離が与えられていなければε近傍は定義できない。距離が定義された空間は距離空間である。ここから、今まで扱ってきた図形は距離空間中の部分空間であるとみなすことができるようになる。測値線や関数の関数列の一様収束の話もする。7章では距離空間での連続写像について定義を与える。

8章では距離空間の開集合と閉集合の定義を行い、境界について考える。9章では距離関数を用いずに、つまりはε近傍や点列の収束を使わずに、写像の連続、位相同型写像についての定義を与える。開集合をもちいた連続の定義を与えることで、位相同型写像が何を保存するかについて明らかになった。10章ではある集合に位相構造を定めることは集合の開集合全体を定めることであると述べる。距離関数を用いない近傍の定義についてもここで述べる。距離空間は常に位相空間であるが、その逆はどうか。10章の最後では距離化可能空間について述べ、ハウスドルフ空間の定義を与える。距離化可能であることは位相的性質。

11章ではコンパクト性について。被覆について述べ、コンパクト空間の定義を与える。コンパクト性とハウスドルフ空間の関係を明らかにした後、実数の連続性について述べる。上界・下界の定義を行った後、アルキメデス的順序体と実数の完備生について述べる。12章では連結空間と連結集合について説明した後、任意の凸集合が連結であると述べる。最後に中間値の定理を述べてこの本は終わる。


まあ、ちょっと読み直したいのがあるので、その前哨戦でした。読み直すのは以下。

復刊 位相解析―理論と応用への入門

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