応用数学夜話

応用数学夜話 (ちくま学芸文庫)

応用数学夜話 (ちくま学芸文庫)

そういえば、読んだのに何もアウトプットしてなかった。まあ、ココに書いたものに以外もだいぶあるから、別にいいけど・・・。おさまりが悪いので、殴り書きしておく。

この本は「夜話」とあるように、話の構成・配列は体系的でない。いろいろな現象(生のデータや実験室的な操作で作り出したデータ等)を数理の目から観察した結果を分かりやすく解説している。話題としては、確率、統計、ORそして最適化手法が出てくる。18の話題に分かれている。

1話では、離散的なサンプルから確率密度関数について、2話では生産計画と輸送計画について線形計画法について述べている。2話から3話は、線形計画問題からシンプレックス法へと話がつながっている。4話では試験の点数を対象に、様々図を用いた分布の読み取り方について解説。16話も過去の統計データからの意味を読み取っている。

5話では秘書の選び方を例に、費用対効果について解説している。6話では5話につづき、選び方についてのランダム性を取り入れた話題となっている。7および8話では統計的規則性について。13話はゲームの必勝法に関して、ゲーム理論の紹介など。14, 15話では組み合わせについて。11話では誕生日が同じ人間がひとつのグループに存在する確率の話や組み合わせについて。

9話では、なるべくすくない質問数で答えを得るにはどうしたらよいか、という問題を扱っている。アキネーターという、ユーザーが思い浮かべたアニメキャラをプログラムが同定する、というアプリケーションにも関わる話題だった。これは、パターンを決定する特徴量(質問)をどのように決めたらよいか、という話でもある。事前分布がわからないの状態では、エントロピーが最大になるような特徴量を選択すれば良いという話つながる(情報利得が最大になる質問を与えればよい)。Random Forest とか。

10,18話は制御や最短経路の話について。18話は郡、環、体という構造を考えると何につかえるのか、という代数的アプローチの応用に関する話である。12話の路上駐車を数理の目から考えるというのはなかなか面白かった。

解説が伊理正夫先生でびっくり。解説によれば、著者は東大の航空学科卒の秀才らしい。いわゆる偉人のひとりらしく(僕はよくわかっていない)、IPSJのコンピュータ博物館にも載っていた。

この本では、現象を考えるための素材として模型実験を何度も行なっている。そして、それら実験の結果を図を用いて分かりやすく説明している。これらの説明は, 1. 図からどんな意味が読み取れるか, 2.図の表示方法をかえたらどんな意味が読み取れる可能性があるか、ということを示すいい例になっている。卒業研究で意味のわからない解説を聞かされていると、こういう文章を読んで少しは勉強すればいいのに、と思ってしまう。